バイアスを外そうとせず、いろんなバイアスをかけられるようになろう

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同僚が「バイアスがかかってるって言われるんですよね」「バイアスを外すにはどうすればいいのだろう」と話をしていたことに対する、自分の答え。

「バイアスを外す」という考え方を、まず外してみる

結論から言えば、バイアスを完全に外すことは不可能だと考えている。
なぜなら何かを見たり考えたりする時点で、何らかの前提・経験・価値観というフィルターを通して捉えているからだ。
もし「自分はバイアスをかけていない!」と思っているならば、それはそのバイアスに気づいていないだけだろう。

「バイアスがかかっている」と言われるのは、おそらく一面的な見方しかできていないことによる。
しかし、視点や切り口を変えれば、それはまた新たなバイアスを生み出す。
大切なのは、その「視点や切り口をいくつ持てるか」ということ。
「自立のためには、依存先を増やす」と言われるように、逆説的に「いろんなバイアスをかける」を心がけるとよい。

「絶対的な正しさが存在する」という考えは、一面的な見方を作り出すので、まずはその前提を外すこと。
「明らかに間違った意見」などは存在するかもしれないが、「正しい物事の見方」「正しい意見」は存在しない。
科学や倫理的規範すら「絶対的」ではなく、科学も現在の有力仮説に過ぎないし、倫理的規範も時代とともに移り変わる。

自分の知らない見方を知る

視点や切り口を複数持つには、まず「自分の知らない見方を知る」こと。

  • 1つの組織でずっと働いている人は、他の組織の人と会話したり仕事してみる
  • 日本にしかいたことがない人は、海外に行ってみる
  • いろんな著名人の書籍を読んだり、講演を聞いてみる

ここで大事なのは、心地よさに流されないこと。
人は心地よい環境を好むし、心地よい意見に耳を傾けがちだが、それがバイアスを形成する要因になっている。
そのためちょっと不快と感じる環境に身を置いたり、ちょっと耳障りと感じる意見に耳を傾けてみることが重要になる。
その意見に同意・共感ができなかったとしても「一理ある」と感じられれば、その見方を知ることには大きな意味がある。

相対化によって「絶対的」のバイアスを減らす

「絶対にこうだ」と思ったときは、自分の視点が狭かったり、世の中を知らないだけだ。これは自身も経験がある。
過去に「東京には絶対住みたくない」と思っていたことがあったが、実際は住めば都だし、東京のよさもわかってきた。
未知・未経験による不安が「絶対」という思い込みを形成するのかもしれない。

ITでいえば「Spring Bootが素晴らしいフレームワークだ!これしかない!」と感じたこともある。
しかしここでバイアスにとらわれていることも少なくない。
このような場面でバイアスを差し引いて考えるための問いは以下の2つ。

  • その代替案をいくつ知っているのか?
  • その代替案を実際に試したことがあるのか?

ここで重要なのは相対化することにある。
「1つだけしか知らない」「1つだけを詳しく知っている」という状態が、「絶対的なもの」というバイアスを作り出している。
そのため他の選択肢を知り、実際に試すことで、バイアスを減らして対等に比較できるようになる。
「これが絶対」だと感じたら、意識的に相対化していくことを心がけたい。

バイアスとは色眼鏡をかけて見ること

喩えるなら、バイアスとは色眼鏡をかけるようなもの。
赤いものは、赤い眼鏡をかけていたら見えない。青い眼鏡をかければ見えるが、それは本来の色ではない。
更に黄色い眼鏡をかけてみる。すると、だいたい本当の色が何色なのか、見当がついてくる。
…しかし、それは「本当の色」なのか?

色覚は人によって異なるし、人は可視光線しか見られないし、人の眼には盲点(見えない領域)もある。
複数の色眼鏡を持つことは大事だが、それでもバイアスからは逃れられない。
大事なのは、常にいま見えているものが全てで、絶対的で、正しいものだと思わないこと。

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