生成AI活用の鍵は「出力だけ見てレビューできるか?」

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生成AIを使って文書を書いてもらったり、コードを生成してもらったりする機会が増えています。
ただ、生成された成果物をどうやってレビューするか。
これが「生成AIを効果的に活用できるかどうか」の分かれ目になってきていると考えています。

鍵となるのはReviewability、すなわち「出力だけを見てレビューできるか・しやすいか」という視点です。

プロセスのレビュー vs 出力のレビュー

レビューには大きく分けて2つのアプローチがあると考えています。

プロセスのレビューは、どのようにしてその成果物が作られたかを確認する方法です。
手順を追い、途中経過を見守り、判断の妥当性を逐一チェックする。
作業者の隣に座ってペアで進めるような形になるので、時間がかかります。

一方、出力のレビューは、最終的な成果物だけを見て妥当性を判断する方法です。
差分を確認したり、テスト結果を見たり、整合性をチェックしたりすることで、プロセスを追わずとも品質を担保できます。

これらの違いが、タスクを他者に委譲できるかどうかを大きく左右するということです。

なぜ生成AI時代にReviewabilityが重要なのか

業務を外部委託する際にもReviewabilityの考え方は意識していました。
ただ、生成AIの登場によって「任せる」という選択肢が劇的に身近なものになりました。
誰もが日常的に、様々なタスクを生成AIに委譲できる時代になっています。

その結果、「何を任せるべきか、何を任せるべきでないか」の判断が高頻度で求められるようになってきています。
そこでReviewabilityという判断軸を持つことで、適切な判断がしやすくなるだろうと考えています。

出力だけでレビューできるタスクは、生成AIに任せやすいですよね。
逆に、プロセスを追わないと品質が担保できないタスクは、任せることが難しいでしょう。

Reviewabilityを高める方法

重要なのは、Reviewabilityは固定されたものではなく、改善の余地があるということです。
工夫次第では、プロセスレビューが必要だったタスクを、出力レビュー可能なタスクに変えられると考えています。

例1:テストコードによる担保

複雑なコードのリファクタリングを考えてみます。
テストコードがない状態では、リファクタリングのプロセスを一つひとつ追わないと、正しく動作するか判断できません。
PRだけを見ても難しく、変更過程をペアプログラミングでレビューしながら進めたほうが早いケースもあります。

しかし、しっかりとしたテストコードが書かれていれば話は変わります。
リファクタリング後にテストが通ることを確認するだけで、機能が壊れていないことが分かるわけです。
プロセスを追う必要がなくなり、結果だけでレビュー可能になります。

例2:宣言的な記述への移行

例としてAWSのコンソール操作を考えてみます。
GUI上での操作は、どこを変更したのか、意図しない変更が紛れ込んでいないかを確認するのが難しいですよね。
ペア作業でチェックするなど、プロセスのレビューが必要になってしまいます。

これをCLIベースにすると、実行したコマンドだけでレビューできるようになります。
さらにTerraformのようなIaCツールを使えば、宣言的に「あるべき状態」を記述できるわけです。
冪等性があり、実行順序も気にしなくてよくなる。こうすると、出力のレビューが格段に容易になります。

例3:整合性チェックの仕組み

Excelでの集計作業なども同様です。
集計ロジックの妥当性を考え始めると、マクロの中身やIF文の書き方など、プロセスを全て確認する必要が出てきます。
正直、生成AIに生のCSVやExcelをそのまま操作してもらうのは怖くてできません。

しかし、「不整合を発見する方法」さえ持っていれば、結果だけでレビューすることができます。
例えば集計表の場合は「行の合計列と列の合計列を足すと、一致する」といった法則が整合性チェックの一助になります。
統計的な手法を使うなら、ベンフォードの法則から外れていないかを確認する方法もあるでしょう。

こうした仕組みや観点が複数あれば、プロセスを追わずとも出力の妥当性を判断できるようになります。

生成AI活用への示唆

Reviewabilityという視点を持つことで、生成AIの活用範囲が明確になるだろうと考えています。
出力だけで判断できるタスクは、積極的に生成AIに任せればいいでしょう。
画像生成、データの整形など、明らかにおかしいものがすぐに分かるタスクは任せやすいです。
一方、専門的な判断が必要で、プロセスの妥当性が重要なタスクは、まだ人間が主導すべき領域だと考えています。

そして何より重要なのは、今プロセスレビューが必要なタスクも、工夫次第で出力レビュー可能にできるということです。
テストを書く、宣言的な記述にする、整合性チェックを仕込む。
こうした改善を積み重ねることで、生成AIに任せられる範囲を広げていけるんじゃないかと思ってます。

AIエージェント活用においても、この視点は重要です。
生成AIに複雑なタスクを任せる際、プロセスの品質を担保する必要がある部分は、定型化・品質担保されたツールを呼び出す仕組みを使うといいでしょう。
定型化・品質担保されたツールを使うようにすれば、出力だけをレビューすればよい形に整えていくことができます。

まとめ

というわけで、Reviewabilityのお話でした。
Reviewabilityは今に始まったものではありませんし、ある程度コントロールし、高めていくことができるものです。
生成AI時代においてReviewabilityはますます重要になり、生成AI活用の鍵になると思います。

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