情報処理技術者試験の受験理由と、受けてよかったこと
最近のIT業界において、IPAの情報処理技術者試験は少し軽視されがちな印象を受けます。
職場や指導の場で「基本情報技術者試験、応用情報技術者試験までは取っておいたほうがいいよ」と伝えることがあるのですが、
一方で「情報処理技術者試験って、役に立たない気がする」「AWSの試験とか受けたほうがよくない?」という声を耳にしました。
そこに対して明確な答えを即答できなかったので、まずは自分の経験について整理してみることにしました。
これまでに合格した情報処理技術者試験
IPAの情報処理技術者試験のうち、私が合格したものは以下です。
- 基本情報技術者試験(FE)
- ソフトウェア開発技術者試験(SW)1
- 情報セキュリティスペシャリスト試験(SC)2
- エンベデッドシステムスペシャリスト試験(ES)
- ネットワークスペシャリスト試験(NW)
- データベーススペシャリスト試験(DB)
- システムアーキテクト試験(SA)
FEとSWは学生時代に合格済みでした。社会人になった時の目論見としては、Web技術に関心があったためSC、NW、DBの3つは5年目までにすべて取ろうと考えていました。
ESはあまり興味がなかったのですが、当時は組み込み系の業務に携わっていたため、一応受験することにしました。
その後、社会人3年目で上司から「アーキテクトをやってほしいなーって思ってるんだよね」と言われたことをきっかけに、アーキテクトという役割に興味を持ち始め、SAの受験に至りました。
受験の動機
当時、私が受験した動機はいくつかありますが、この中で本質的な価値に繋がるものとして以下が挙げられます。
- 体系的に知識を理解するため
- 一定の信頼がおける知識を取り入れるため
- 社外にも通用する業界標準的な資格であるため
1. 体系的に知識を理解するため
これは、具体的には業務や興味による知識の偏りを防ぐことです。
私はITに興味があるためいろいろ情報収集しているつもりですが、このやり方では興味のない分野は疎かになり得ます。
また、業務において使う知識は一部分に限られるため、実際には知らない知識がもっとあるのではという不安もありました。
このような不安に対して、自身のスキルがどの程度かを把握するためには資格試験が適切だと考えました。
2. 一定の信頼がおける知識を取り入れるため
私は社内のソフトウェアやITの技術水準をあまり信用しておらず、世の中より遅れていると感じていました。
また、周囲には技術面で尊敬できるエンジニアもいなかったため、技術を伸ばすには自分でなんとかする必要がありました。
このような状況下で、私は一定の信頼がおける知識を取り入れる手段が必要でした。
その手段の一つとして、資格試験を取り入れるのは有効だと考えました。
3. 社外にも通用する業界標準的な資格であるため
私は市場で通用する人材になることを重視していました。
そのために、社内だけで通用する知識ではなく、世の中で通用する知識を身に付けることを意識していました。
その他、「ベンダー系のIT企業は社内方言が多い」などの噂も耳にしていたため、社内方言を使うことは恥ずかしいという意識もありました。
こういった課題意識に対し、市場で広く受け入れられている資格試験を活用することで標準用語や標準知識を身に付けられると考えました。
その他の動機
…と、ここまではとても意識が高そうな内容を書きましたが、以下のような動機もありました。
- 業務が楽しくなかったため(技術的な刺激が得られないため)
- 社内異動や転職を視野に入れており、その際のアピールに繋がる可能性があるため
- 会社のサポートがあるため(合格すると奨励金が支給されるため)
とても表面的で即物的な感じがしますが、人間なのでこういう一面もあるのは仕方ないかなーと。
受験してよかったこと
受験してよかったことは、大きく4つあります。
- 自信に繋がった
- 自分の弱い領域を把握できた
- 用語にアンテナを張れるようになった
- 業務で専門性を活かした業務の機会が増えた
1. 自信に繋がった
情報処理技術者試験に合格することは、思っていた以上に自信に繋がりました。
世の中で広く普及している試験に合格することが、社外でも通用するという自覚に繋がったのだと思います。
今思えばこれはIPAという権威に縋るような側面もあり、自信の持ち方としてはベストではないように思いますが、これは当時の自身のマインドセットに課題があったためです。
しかし、あまり自信を持てていなかった当時の自分にとって、資格試験の合格はメンタル面で大きくプラスになりました。
2. 自分の弱い領域を把握できた
全部解けなくても合格はできますが、勉強中や試験中に解けなかった問題は強く印象に残ります。
「あの問題、危なかったな…」「あの問題全然解けなかったな…」という体験から、自分の弱点を認識できるようになります。
弱点を把握することは今後のスキルアップにおいて重要ですし、業務においても「これはできそう」「これは自分だけでは無理かも」という見込みを立てやすくなります。
3. 用語にアンテナを張れるようになった
用語や知識について課題意識が高まり、業務や日常で拾えるようになります。
業務で初めて見かける用語は「うーん、よくわからないな…」で終わってしまう可能性がありますが、「あ、これ見たことある用語だ!」となると取っつきやすくなりますし、「いろんな所で見かけるということは重要なんだな」という意識に繋がります。
これは業務の中での成長機会を増やすことに繋がるため、長期的にはスキル面で大きな差に繋がると思っています。
4. 業務で専門性を活かした業務の機会が増えた
社内で専門性を活かす機会に恵まれることになりました。 具体的には、大きく2つの出来事がありました。
1つは、情報セキュリティスペシャリスト試験を取得したことから、製品開発における情報セキュリティ技術の活動に配属されたことです。
文面だけ見ると楽しくなさそうですが、当時は業務において専門性をほとんど活かせていないと感じる日々でした。
そんな中、少しでも専門的な知識を活かせる機会ができたことは、とても嬉しかったです。
もう1つは、高度試験を複数取得したことから、社内異動のきっかけに繋がったことです。
とあるプロジェクトの適任者を探していた所、偶然にも自分が候補者として入ることになり、結果的にプロジェクトへ参画することができました。
これについては上司に後で聞いた所、社内で高度試験の保有者が少ない中でこれらの資格を保有していたことから、上司は強く推薦することができたようです。
社内異動については偶然的な要因もかなり多く、高度試験を取得すればできるものではなかったと思います。
しかし自分なりに準備しておいたことが、偶然のチャンスをモノにできたのだろうと思います。
所感
何事においてもきちんと目的意識を持って取り組むことが重要で、資格試験も例外ではないということを実感しました。
周りからは「資格ハンター」みたいにからかわれることもありましたが、きちんと振り返ってみるとそれなりに考えていたんだなぁ…と。笑
また、実際に受験してしばらく立ってから振り返ることで、当時は実感していなかった良さにも気付くことができました。
次回は今回の内容を踏まえて、情報処理試験の受験をオススメする理由について書きたいと思います。