新人さんを育てるときの向き合い方

会社に入ってから2人ほど新人さんを育てる機会があったので、今後のために意識していたことを言語化。
納得感や当事者意識を持ってもらうことと、市場で通用する能力を身につけてもらうことを重視しています。

育成方針

目指す方向性・人材モデルの認識を合わせる

ひとまず、3年先くらいで大まかに目指したい方向性や人材モデルについて認識を合わせる。
社内外で実在する人を目指すようにしてもよいし、「Webデザインまで含めて担当できるフロントエンドエンジニア」などでもよい。

本人の目指したい方向性が明確であればそれをよいが、新人の場合はそうでないことも多い。
そのため「サーバサイドエンジニア」「フロントエンドエンジニア」など、方向性を幾つか用意しておいて、選んでもらうとよい。1

社内外で活躍できる人材を目指す

社内で活躍するためには比較優位の原則を意識し、チームで弱いと感じる分野やスキルを伸ばすとよい。
ただしその分野やスキルは社外においても需要があり、市場で通用するものであることが必要。

社外で通用する実力を持ってもらうことは極めて重要。 社外で通用する実力があるということは「転職もできるけど、色々考えてこの会社に残っている」という決断をしているため、本人にとって納得感があり、満足度の高い状態となる。

タスクのアサイン

目的、ビジネス上の位置付けを理解してもらう

なぜそのタスクが必要なのか、こなさないとどのような影響があるのかなどを説明する。
目的を理解してもらうことで、誤解を未然に防ぐことができる、成果物に求められる品質やスピード感などの認識が合わせやすくなる、納得感が生まれる、などの効果がある。
逆に目的を理解しないままだと、そのタスクが形骸化したり、誤解によるミスが起きやすくなったりする。

個人事業主として請け負うイメージを持たせる

タスクは意味のあるまとまりで依頼し、個人事業主(フリーランス)として引き受けるようなイメージを持ってもらう。
他部門とのやりとりが必要であればそこまで含めて担当し、何かあった時には「もしフリーランスとして仕事を受けていたら、どう対応するか?」という視点で考えてもらう。

このような視点を意識することで当事者意識を持たせることができ、成果物やその品質、スピード感などを意識するきっかけになる。
またそのタスクを完遂することが、市場で通用する能力を身に付けることにつながる。

期待することを伝える

「なぜあなたに頼むのか」を出来るだけ伝える。以下は伝え方の例。

  • このタスクを通じて、◯◯の技術を学んでほしいから
  • 専門性を考慮すると、最も適任だと思ったから
  • ただの雑務だけど、年功序列でコスト的に最適だから

きちんと伝えることでスピード感や勘所が意識しやすくなるし、専門性を期待されれば誰でも嬉しい。
学んでほしいことはきちんと伝えなければ、タスクをこなすだけで終わってしまう可能性があるので注意。

ミス、失敗

失敗を許容し、判断能力を育てる

明らかに失敗しそうな時は「こうしたほうがいいよ」などの助言はするが、納得・理解できないようであれば失敗してもいいからやってもらう。2 当然、この結果失敗したとしても責めてはいけない。
失敗すると短期的には損失になるが、中長期的には経験に裏打ちされた判断基準を育てることに繋がり、自分で判断できる人材になる。

逆に「こうやればうまくいくから、とにかくやってみて」とするとその場はうまくいく(かもしれない)が、判断基準やその感覚が育たない。 その結果、もし将来的に同じような状況に陥っても、どのような選択肢を取るべきなのかが感覚的に判断できない。

出来るだけ、本人にリカバリーしてもらう

失敗のリカバリーは、出来るだけ本人が行うのがよい。
自身の失敗をリカバリーするのは納得感があるし、失敗の重さを認識したり、未然防止を意識するきっかけにもなる。
(ただし、本人だけでは明らかに無理な場合はサポートしたりすることも必要)

「同じようなタスクであれば今度はもっとうまくできる」「この分野のトラブルは自分で解決できる」という感覚を持ってもらうことが重要だが、そのためには「そのタスクを自分で完遂した」という経験が必要。 もし失敗を他の人がリカバリーしてしまうと、このような感覚を持ちづらくなる。

やる気を奪わない

既に本人が失敗を反省しているのであれば、叱ってはいけない。叱ってもやる気が下がるだけで、時間と労力の無駄になる。3
またミスを責めたり責任を問うのではなく、同じ目線で解決に向けて話し合うことが重要。(「人vs人」の対立ではなく、「人&人vs問題」にすることが重要)

ミスした原因を探ることは重要だが、「なぜ◯◯したのか」という質問は誤解を生みやすい(責められているように誤解され、人vs人になりやすい)ので注意が必要。

質問・相談

質問してもらう基準

社内のことはググっても解決しないので、どんどん質問してもらって回答する。
特に、あらゆる会議や業務の目的は意識してもらい、分からなければ必ず質問してもらうこと。

汎用的な知識は、どうすればトータルコスト(≒時間)が小さくなるかを意識して以下のように対応する。

  • キーワードが分かるなら、そのままググってもらう
  • ググるキーワードが分からなければ、キーワードだけ教えてググってもらう
  • 体系的な知識はググっても効率が悪いので、体系的に概要を教える。詳細は書籍などを読んでもらう

質問しやすい環境づくり

  • 席を近くする
  • 集中的に質問や会話するための時間を、定期的に用意する
  • 非同期コミュニケーション(メールやSlack)でも対応できるようにする

注意点

下手な対応をすると質問を回避するようになり、学ぶ機会を奪うことになるので注意する。

  • 同じことを聞かれても怒らない
    • 最初はどこが重要かが分からない。次第に頻出≒重要と認識して覚えるはず
    • 一回教えるだけでできたら苦労しない
  • 忙しい時は「申し訳ないけど時間がないから後で」と伝える。「たまには自分で考えて」などは厳禁

その他

誠意を持って対等に接することを心がける。
仕事を頼むときはお願いします、やってもらったらありがとう、と上下関係なく敬意を払うこと。
自身の言動を無理に正当化したり、責任を押し付けたり、自分がされて嫌なことは絶対にしないこと。
世の中や新人さんの同期と比較するのではなく、新人さん本人がどれだけ成長したかを見ること。


  1. 選んでもらうほうが納得感が高められる ↩︎

  2. もちろん、失敗時のリスクマネジメントは必要 ↩︎

  3. ただし最初のうちは、きちんと問題意識を持っているかどうかを探ったほうがよい ↩︎

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